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バレエプログラムブログ

椿姫・より抜き

「椿姫」の中で印象的だった主役以外の人が主となるシーンをいくつか。
一つはアルマンの父デュヴァル氏が、マルグリットに息子と別れてくれるよう頼みに来るシーン。
引き気味のデュヴァル氏の動きが、マルグリットへの距離感を感じさせます。
別れを了承したマルグリットを一瞬だけ抱きしめてついと離れる場面でも、デュヴァル氏はきっと良心的な人物なのだろうと想像させます。
娘にするような口づけを、とデュヴァル氏に頼むマルグリットは、ちょっとセンチメンタル過ぎるとも思えますが
レディにするように手の甲に優しく口づけて去るデュヴァル氏の紳士ぶりが印象的でした。
もう一つはオリンピア。したたかさが随所に見られるオリンピアは、第三幕で再会するマルグリットとアルマンに割って入り、アルマンの腕に手をかけて踊ります。
挑発するようなオリンピアの笑みと動きが、いっそうマルグリットの悲壮感を引き立たせるように思いました。

2013年6月25日
マルグリットの衣装を楽しむ

「椿姫」のマルグリットは、衣装の変化も楽しんで見ています。
きらびやかな、とか、民族色豊かな衣装が楽しめる作品はほかにもあまたありますが、比較的シンプルな衣装がそれぞれのシーンに合っていて
好きです。
仮面舞踏会のシーンの、淫蕩な感じのする赤の衣装や田舎の別荘に遊びに行くときのよそゆき的な衣装もよいのですが。
華やかな顔立ちのせいか、黒のパドドゥ、白のパドドゥのそれぞれの衣装、作品のキーワードともなる青の衣装など、華やかな顔立ちのアニエス・ルテステュの場合
シンプルな方が美しさを引き出しているように感じます。
青とか黒は大人女性度全開な感じですが、白は清潔さを帯びていて、パドドゥ自体にもかわいらしさが覗きます。
同じ白色の衣装でも、訪ねて来たアルマンの父デュヴァル氏を招き入れるシーンでは、ひっつめた髪型のせいもあって、急に痛々しく見えてきます。

2013年6月24日
痛々しきアルマン

何度でも書いてしまう「椿姫」の続き。
見る度に、痛々しささえ感じてしまうステファン・ビョヨンのアルマンです。
ヴァリエテ座でマルグリットと出会うシーンで見せる、からかわれて恥ずかしさを押し隠して帰るそぶり。
マルグリットの私邸に招かれ、ひれ伏して愛を表現するシーン。
マルグリットから椿の花を受け取って喜びに浸るシーン。
仮面舞踏会の合間を抜けてやってくるマルグリットを待ちわびるシーン。
この関係がこの作品の肝であるにもかかわらず、つい、踏み込むのをやめたら、と思ってしまう、痛々しい初心さに映ります。

2013年6月21日
椿姫

今日は何回見たことか・・・「椿姫」です。
パリ・オペラ座2008年収録。
いつも静寂が美しいと感じる作品です。
その上、登場人物も、オリンピアもガストンもプリュダンスも、その他脇の人たちまでみんな美しい~といつもため息をついています。
挿入されている劇中劇「マノン・レスコー」が、衣装やメークのせいか
舞台のほかの登場人物(アルマンやマルグリットほか)と違い、浮き上がって見え、少し距離を置いて見ることができる一方、
マルグリットの方には感情移入してしまい、不吉な予感を抱いて落ち着かなくなる様子に、ともに息を呑むように見守ってしまいます。

2013年6月20日
男の心中は

「ジゼル」の中で、よく解釈が分かれると言われるのが、アルブレヒトの心中です。
アルブレヒトはジゼルを本気で愛していたのか、それとも領民のひとりでしかないジゼルは戯れの恋の相手に過ぎなかったのか。
本気の恋ではなかったというのが今では一般的な解釈と言われますが、ヨゼフ・ヴォルガのアルブレヒトは、上品で紳士的。
プレーボーイという印象ではありません。
ただジゼルが息絶えた後には、アルブレヒトの本気の悲しみを感じますが、罪をなすりつけ合うシーンあたりには、ちょっと卑小さを感じてしまいます。
本気の愛ではあったけれども、叶わなかったからこそある意味安心して表現される愛のようにも感じるのは、穿ちすぎでしょうか。

2013年6月19日
ジゼル

「ジゼル」も私の中でやはり夏向きな作品です。
今回見たのはオランダ国立バレエ2009年。アンナ・ツィガンコーワは私には、数年前のドンキホーテの快活な印象が強い人でした。
前半の花占いのシーンあたりは特に、病弱な女性という設定を忘れそうなほど、時に快活さが垣間見えます。
狂乱のシーンでも、感情の発露ではなく、静かに美しく壊れていく感があり、周囲の人も痛みをもってそれを見守っているような感じがします。
心臓が痛み、悪寒が走る前の軽やかなステップは、聖霊となる序章なのでしょうか。
息絶え、聖霊となった二幕では表情も雰囲気も対照的ですが、人間くさいと時折感じるのは、どのあたりから来ているのでしょうか。
ところで、詩人でもあったゴーティエは、未婚のまま亡くなった乙女が墓の中から出てきて踊るウィリー伝説にこの物語を着想したと言われます。
無念さを抱えたウィリーたちの群舞の、超常的でちょっと冷気が来るような感じが夏向きだと、私はどこかで思っているのかもしれません。

2013年6月18日
真夏の夜の夢

急に暑くなってきたからという訳でもないのですが、久しぶりに「真夏の夜の夢」を出してきました。
ABT2004年収録。タイターニアはフェリです。
アシュトンの創り出すユーモアあふれる世界が好きです。
細やかに感情を表現する振付けは、ある意味、言葉を使わないのに言葉を越えた世界を表現しているようにも思えます。
何度見ても「結婚行進曲」が流れるラストの仲直りシーンが好きです。
オーベロンとタイターニアのパドドゥも実に美しく楽しめました。

2013年6月17日
横のつながり

文化は横に見ると面白いというのが持論ですが、この「若者と死」の誕生した背景を考えてみても、やはり同じことを思います。
ここで言う横とは、ジャンルごとに考える「縦」に対して、同時代の文化を、その人や作品のつながりで見ていくことです。
「若者と死」の着想は、詩人で劇作家でもあるジャンコクトーによってもたらされたと言われます。
コクトーはココ・シャネルや、モディリアーニなどと交流があり、ピカソやサティとともに手がけたバレエ作品も残しました。
コクトーは来日した際、歌舞伎や相撲にも関心を持ったと言われます。
人よりも先に情報が行き来できる現代よりも、強烈な才能を持つ人と人、人を介した文化と文化が出合うことにより感動や衝撃があったのかもしれない、などと想像しています。

2013年6月14日
若者と死

「若者と死」は決して面白い作品ではないと思うのは、私だけでしょうか。
派手な衣装も華やかなシーンもなく、作品全体を静寂が包む。
登場人物は男の若者と実は死に神である美女の二人。前衛的、というとちょっと違うかもしれないのですが、そんな香りすらする作品です。
初演ダンサーではないものの、この作品はやはり若者役のニコラ・ル=リッシュの圧倒的な存在感が成り立たせると思えてなりません。
「イワン雷帝」の狂気は、その迫力に身震いするほどでしたが、こちらの「若者と死」でも独特の雰囲気が立ち上ります。
洞察力に深い解釈、そして表現力を持ち合わせていると言われるル=リッシュ。
その解釈には、彼の人間観を垣間見る思いがします。

2013年6月13日
オスタ

さて、先に少しだけ書いたカルメン。
これはパリ・オペラ座バレエ団2005年のDVDでですが、カルメンを演じるクレールマリ・オスタがまた素晴らしい。
その素晴らしさを一番感じたのは、実はカーテンコールのときでした。
オスタのノーブルな素顔をカーテンコールで見たときに今更ながら、この人はカルメンの少し下卑た、危険な女になりきっていたんだ、と気付きました。
それぐらい、完全にカルメンでした。
プティの振付けがまた、カルメンの小悪魔的な雰囲気をより引き出しているのでしょうか。
ラストで、ホセにナイフを突き出され、平手打ちをされても一向に怯えず、ひるまず死んでいくカルメンの強さは、女性をも引きつける理由ではないでしょうか。

2013年6月12日
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