複雑なあらすじのないバレエ作品が好きです。
例えばジェームズ・ロビンズの「コンサート」。
ピアノを中心に、コンサートを取り巻く人たちの様子をコミカルに描いています。
最後にダンサーたちが集まってきて騒ぎが始まるのですが、難しいことを考えずに見られる楽しい作品です。
ラストで昆虫採集の網を持ったピアニストが、蝶々の紛争をしたダンサーを追いかけまわすシーンが、ピアニスト×昆虫採集という思いもよらない取り合わせで笑わせてくれます。
ロマンティックバレエの有名な作品とは別の、ミハイルフォーキンによる「レ・シルフィード」もやはりはっきりした筋書はありません。詩人と空気の精が森の中で踊るロマンティックな作品。時々ですが、バレエの発表会で見かけることがあります。
抽象バレエと言って、いいのでしょうか。右脳全開で造形美に浸れる、音楽の「絵解き」です。
真夏の夜の夢では、オーベロンのたくらみ(というほど悪質ではありませんが)によって、王妃タイタニーアが頭がロバとなってしまった職人ボトムに恋をします。
このロバが、この物語の中で非常にいい仕事をしています。
男性ダンサーがトゥシューズをはいて、頭にロバをつけて踊る姿が、妙にかろやかに動物っぽさを表現しているよう。目がまたやたらかわいくって、ユーモラスです。
それにしても王妃タイタニーアはさすが、女優フェリ。
最初の夫婦喧嘩のシーンでは、ちょっと高慢な感じをさせ、浮気草を垂らされて目覚めるシーンもなんとも妖艶。ロバに恋をしてのぼせ上がる様子が、いたたまれないほどです。
ラストは、タイタニーアがオーベロンに従順になってめでたし、めでたし。
このパドドゥで別人のように、オーベロンを信頼しきっている様子が表現されています。オーベロンを演じるフレデリック・アシュトンのステップもさすがでした。
DVDでABTの「真夏の夜の夢」を見ました。
ロマンティックな森の中で繰り広げられる一夜の物語です。
妖精の王、王妃、駆け落ちした男女と彼らを追いかける人間の4人、それに目覚めて最初に見たものに恋をしてしまう「浮気草」という小道具が効いています。
「ジゼル」もそうですが、妖精たちが登場する作品は、とても好きです。人間の足でありながら、重みを感じさせない軽やかな動きはまさにバレリーナの真骨頂という気がするからです。
同じ妖精でも、王の腹心であり、浮気草を取りに行かされるパックは、動きがダイナミックで、ちょっとハラハラしかねない衣裳ですが、エルマン・コルネホが野性味にそそっかしさも交えたいい味のキャラクターを演じています。終盤近くのジュテもとっても美しい。
ところで、物語の冒頭、この二人の夫婦喧嘩は、「とりかえ子」をめぐって始まります。このインドの「とりかえ子」は、タイタニーアがとても大事にしているのですが、王オーベロンはこの子をどうしたいのか、嫉妬?なのか、何なのか、今ひとつ今もってピンと来ていません。