フランスのバレエダンサーで振付師、ローランプティ氏が10日、自宅のあるスイスで亡くなりました。87歳。各メディアに掲載されていた写真は、とてもその年齢には見えないほど颯爽とし、瞳には強い力をたたえています。
プティと同時代を生きたベジャールは、プティを評して「フランス人ではなく、パリジャン」と語ったと言います。
まさしく、プティといえば、しゃれっ気、エスプリ。しかし、「コッペリア」のペーソスあふれるラストに代表されるように、作品を彩る洒脱さの底には、人間の深淵なる本質が残酷なまでに描かれていたように感じます。
コクトーとのコラボレーション「若者と死」、「プルースト~失われた時を求めて~」など実に幅広い作品が残されています。
そう書きながら、調べ物をしていて気付きました。亡くなった7月10日は、プルーストの誕生日でもありました。
振付家は、作品となって永遠に生き続けることができます。そう考えると、決して寂しくはない訣別の時です。
映画好きの友人が、コミックや小説を実写化するとき、原作とは別のものだと思った方がいい、と常々言います。原作でつくられたイメージをそのまま投影した映画などそもそも無理、違うものとして楽しむべきというわけです。
ここ最近で実写化するとどうなるのだろうと、不安と期待を抱いたのが、2009年の「昴ースバルー」でした。日本では数少ないバレエ映画です。主演は黒木メイサさん。ダンス歴は長いそうですが、バレエは3カ月間、猛特訓をしてトゥシューズで立てるようになったといいます。
ただ、いくら優秀な役者さんであっても、バレエというのは一朝一夕に身につけるのは難しく、それであればむしろ演技経験のないバレリーナをキャスティング する選択があったのではないかと思います。日々の地道な鍛練が体を作り、雰囲気を醸し出すのがバレエであり、その過程があってこそバレリーナたりえるのだ と逆説的に感じました。
映画は厳しい評価が多かったようですが、原作は非常に面白く読みました。
病気の弟の存在が大きく影響した昴の性格形成、舞台を移し、めくるめく運命。
引き付けられる昴のキャラクターだけに、また「違うもの」として楽しませてくれるような映画ができないかな、と思っています。