熊川哲也演出・振付のKバレエカンパニー「シンデレラ」が来年2月、初演されます。
来年、Bunkamuraオーチャードホールの芸術監督に就任し、最初の企画公演となるもの。
プロコフィエフの音楽「シンデレラ」は、よくフィギュアスケートで流れていたので、聞いたことがある人が多いのではないでしょうか。
プロコフィエフの「シンデレラ」は舞踊的であるように、意識して書かれたものだと読んだことがあります。
着飾ったシンデレラが送りだされる1幕のワルツと2幕の終わりでは、同じ曲でもまるで違ったように聞こえ、シーンによって和声や伴奏が違うことが聞きどころです。
だれもが知っているぺローの童話を熊川哲也がどうオリジナリティを含み、どんな演出にするのか、来年の楽しみとなる公演です。
昨夜のNHK-FM「バレエ音楽スタジオ」はこの「シンデレラ」を中心としたプログラムだったのですが、うっかり聞き逃し、軽く失意を覚えつつー。
パリ・オペラ座バレエ「ドガの踊り子」のDVDの評論を読んでいました。
パトリス・バール振付、エトワール役のドロテ・ジルベール、バレエ教師役でマチュー・ガニオ、常連客のジョゼ・マルティネズ・・・と豪華なキャストです。
ドガといえば、踊り子を主題とした絵が数多くあります。
代表作は「踊りの花形」。舞台上で軽やかに舞う躍動的な踊り子の絵です。
背後には夜会服を着たパトロン。
当時のバレエの世界の厳しい現実をのぞかせるような構図で、ドガの得意な人工光の描写が光ります。
「ダンス教室」「三人の踊り子」などバレエをモチーフにした作品が多いのは、自身、バレエが好きでオペラ座の定期会員となっていたからということです。
そのドガの彫刻「14歳の小さな踊り子」をテーマとしているのが、この作品「ドガの踊り子」。
ドガと同じように、当時の踊り子の置かれたシビアな状況を描いています。
当時の風俗の描写が面白い、ユニークな作品という気がします。
ワールドツアー中の韓国バレエ団「ユニバーサルバレエ」が来年2月、日本公演を行うことが、少し前に発表されました。
ユニバーサルバレエは今年は9月に日本上陸。東京公演は1日のみでした。
9月の演目は「ジゼル」。正統派の演技&演出だったと好評でした。
各メディアで報じされていたジゼル役のファン・ヘミンのポアントの写真がとにかく美しい。
アルブレヒトを演じたロシア生まれのコンスタンチン・ノヴォセロフも高い評価を得ていました。
クラシック音楽の演奏家がアジア系であるというだけで、少しばかりマイナスにみられるのと同じように、日本ではとりわけ、あまり知られていないユニバーサ ルバレエが演じる古典ってどうなの、という前評判もあったようですが、それを払拭するに十分な舞台だったようです。レパートリーは幅広いそうですから、今後、もっと日本でも見るチャンスが増えればと願います。
前述のパリ・オペラ座ヌレエフ版「白鳥の湖」についてです。
バレエにかかわらず、あまり悲劇は好きではありません。これが日本人気質なのか、できればハッピーエンドで終わってほしい。
しかし、この「白鳥の湖」はそんな感情を超えています。救いようのないヌレエフ版ですが、これでいい、これがいい、と思います。
ひいき目ですが、これはやはりカール・パケットのロットバルトのお陰かも。
悪魔が登場したところで、待ってました!という気分になるのは、この人の魅力だと思います。
フクロウの姿をした悪魔がオデットを連れ去り、絶望に暮れる王子。
悲劇であるのに、ただひたすら美しさと感動ばかりあるのはなぜでしょうか。
そしてもうひとつ。ジョゼ・マルティネズがあまりにもひ弱なジーフクリートをうまく演じているからかもしれませんが、時々、王子もか細い白鳥に見えてしまうのは、私だけでしょうか。
妖艶でした。
パリ・オペラ座によるヌレエフ版「白鳥の湖」のカール・パケットです。
パケットは王子の家庭教師、実は悪魔ロットバルト。
第一幕のジーフクリート王子とのパ・ド・ドゥは秀逸でした。
これは倒錯した愛情なのでしょうか。
金髪に端正な顔立ちは、正統派王子のようでもありますが、やはりこういう癖のある役で力を発揮する人という気がします。
一方で家庭教師の踊りをなぞるジョゼ・マルティネズのジーフクリートは、ちょっと弱弱しく、被支配的な雰囲気を醸し出していました。
敵役も王子役もこなしますが、決して身体能力は高くなく、努力によって克服しているという評のパケット。
第一幕のインパクトが強すぎ、二幕の白鳥の美しさが淡泊に感じられるほどです。
白鳥の湖はやはり、男性の物語という気がしました。