新国立劇場でこの秋、近松門左衛門をテーマとした二つのコンテンポラリーダンスが上演されます。
その一つがアルテ イ ソレラ「女殺油地獄」。
アルテ イ ソレラは「FRAMENCO曽根崎心中」で知られています。
フラメンコと近松作品という取り合わせが、奇矯なようで妙にしっくりと来ました。
今回の「女殺油地獄」も鍵田真由美×佐藤浩希のコンビ。
ストーリーの中でキーワードとなるのが油壺で、演出も油が重要な役割を果たします。
歌舞伎では油の代わりにフノリが使われると聞いたことがありますが、この舞台ではいかに表現されるのか。
挑戦と実験によって新たな世界を開拓するかに見える創作フラメンコに注目しています。
プティの訃報を聞いたとき、最初に頭をよぎったのがこの作品でした。
プティがチャップリンの名作をもとに作り上げた「ダンシングチャップリン」。
周防正行監督による同名の映画が今年春、公開されたばかりでした。
映画は、周防監督とプティとの映画化に向けたディスカッション、それに「ダンシングチャップリン」を集約、再構成した「バレエ」の二幕構成です。
プティ、それにプティによって唯一このチャップリンを踊ることを「許されている」ルイジ・ボニーノ、草刈民代、周防監督。天才が出会うことによってますます進化した作品であると感じました。
一見、散文的なような描写が続く第一幕は、すみずみまで周防監督の計算が施されていることが、後でわかってきます。
「ライムライト」「街の灯」などチャップリンの名作が、バレエによって表現されていく第二幕は、とにかく美しく、感嘆しました。チャップリン作品に感じる 風刺的な意味合いは抑えられていますが、「違うもの」としての完成度が高く、これならチャップリンファンも納得であったのではないかと思います。
プティがこの作品の完成・公開を見届けて逝ったことに、何ともいえない気持ちを抱きました。