「眠れる森の美女」の三幕はコンサートなどでもよく演目に入ります。
大ディベルティスマンで、DVDでも豪華な配役で見せます。
長靴をはいた猫など、ペローの童話に出てくるキャラクターも出てきて楽しい。
一幕と二幕は邪悪な妖精カラボスの存在感が何とも。
このナタリー・オーバンって人、前にたまたまキャストを見ただけなのですが、
ヌレエフ版シンデレラの義姉とか白鳥の湖の女王も演じているんですね。
こうして脇に視線を振りながら見るのもまた楽しみです。
6月の東京バレエ団「ラ・シルフィード」のジェイムズの一人は、柄本弾。今年、プリンシパルに昇格しました。
持ち役とされているのは「ザ・カブキ」の由良之助。昨年はガルニエの傾斜舞台で踊りました。
由良之助が持ち役となるあたり、やはり日本人らしい個性の持ち主というべきでしょうか。
もともとバレエ以外のスポーツも幅広くやっていた、と何かで読みましたが、そういう来歴がひと味違った雰囲気のゆえんなのかもしれません。
東京バレエ団は来年団創立五十周年記念公演。若手の活躍に注目しています。
ところで「眠れる森の美女」といえば、8月の「めぐろ子どもバレエ祭り」で、東京バレエ団が公演します。
このお祭りのメーンイベントということでした。
上演時間は1時間40分。着席で見られるのは4歳以上ですが、十分子どもに
耐えうる時間ではないかと思います。
ポスター・チラシの類いも、平仮名中心にわかりやすく書いてあるんですね。
主演は沖香菜子&松野乃知の若手コンビ、及び、今や旬の上野水香&柄本弾です。
「眠れる森の美女」のDVDを見ました。
パリ・オペラ座バレエ団1999年。
何となく華やいで明るい気分になります。
オレリー・デュポンのオーロラ姫が、何とも華があり。体格は違うけれども
ヘップバーンみたい。
オレリーはオーロラ姫に自分でも「向いている」という認識を持っていると
何かで読みました。
デジレ王子のマニュエル・ルグリは正当派ダンサーといっていいのでしょうか。
威厳さえ感じる、王道の二人による眠れる森のように感じます。
私がなぜドン・キホーテを好きなのか、あらためて考えてみると、ひとつにはキトリのキャラクター。
女性にも好かれそうな陽性のキャラクターを、だれが演じていようが、舞台を見ているだけで明るい気持ちになるような気がするという
ことがひとつ。もう一つは、キトリのグラン・ジュテを見ているのが好きなのかもしれないなぁ、と
何度目かの観賞で思いました。
白鳥の湖の二幕のオデットのように、ほとんど鳥を思わせる跳躍もありますが、キトリのグラン・ジュテは
もっと人間的なダイナミックさが感じられ、そこに何か胸のすくような思いがする、という気がします。
ユーゴーの「ノートルダムドパリ」のうち、美女エスメラルダに関する物語バレエ。
エスメラルダと四人の男の物語です。
コンサートなどで「エスメラルダ」と名のつく踊りは時々目にします。。
中でもタンバリンを打ち鳴らしながら高いキックを繰り返すヴァリエーションは、エスメラルダの
キャラクターを表現しているように思えます。
原作は重々しい悲劇。全幕が上演されることは少ないようで、残念といえば残念ですが、エスメラルダという女性のもつ
特異なキャラクターが、物語を飛び出し、さらに別の世界を作り出したようにさえ思えます。
現在まで踊り継がれているバレエの中で、もっとも古いと言われるのがラ・フィユ・マル・ガルデ。
邦題「リーズの結婚」です。
あらすじにあまり意味はない、と言っては乱暴でしょうか。
楽しい喜劇です。
アシュトン版では、農場の朝で幕開け。
娘リーズを富裕な農園主トーマスの息子アランに嫁がせようともくろむ母親シモーヌ。
しかしどこかずれているアラン。
着ぐるみやポニーが出てきたり、怖いシモーヌが木靴をはいて楽しく踊る「木靴の踊り」などストーリーに重みはなく、ひたすら楽しく見られる作品と言っていいのではないでしょうか。
「海賊」の中でキモになるのは、コンラッドの奴隷・アリの存在と言われます。
バレエコンサートでもメドーラとアリのパドドゥがよく披露されます。
コンラッドには主役としての華やぎがそれなりにあると思うのですが、
ファルーフ・ルジマートフの抑えた存在感、かすかに感じられる憂い、色気が、逆に引き立って感じられます。
アリはバイロンの原作には登場しないそうで、キャラクターは聴衆の受け取り方に
委ねられているとも捉えられます。
主人の恋人に叶わぬ思いを抱きながら、内にその思いを燃やしている。
そういう解釈でしょうか。
久しぶりに「海賊」を見ています。
1989年、キーロフバレエ。
海賊というものが、あまりにも私にとってイメージしづらいからか、何となく敬遠しがちではあったのですが。そもそもややこしいことを考えずに、踊りを楽しむバレエととらえるべきなのかもしれません。
ともかくこの作品の魅力は力強さ。体躯的な力強さとともに、
登場人物が金持ち、海賊と、町娘(という理解でいいのでしょうか)で
(ヒエラルキー的には総督のような高い身分の人もいるにせよ)庶民の底力みたいなものも感じるように思います。
第2場の奴隷市場のシーンでは、女たちが競売にかけられていく嘆きも表現され、表現媒体によっては
残酷にもなりえそうですが、こちらも猥雑な活気を感じます。
ロマンティックバレエの「妖精もの」が好きです。
ラ・シルフィードも然り。
キルトの衣装がたくさん登場するところも、この作品の楽しみどころだと思っています。
もとより、民族色豊かな衣装や演出が好きなのですが、スカート状のタータンがとても可愛い。
タータンのショールは作品の中で、ちょっとした役割も果たします。
第一幕、ジェイムズが自分と同じタータンのショールを婚約者のエフィに贈る場面。
ジェイムズ家の一員になることを示す求愛のシーンです。
エフィのタータンは結婚前、ジェームズとの結婚、ガーンとの結婚で
変わっているのですね。ご当地では「家」がタータンによって象徴されているのでしょうか。
いずれにせよ、このエフィが、タータンのかわいらしく、若い衣装を身につけることによってますます快活なキャラクターが引き立つような、そんな気がします。