「ジゼル」も私の中でやはり夏向きな作品です。
今回見たのはオランダ国立バレエ2009年。アンナ・ツィガンコーワは私には、数年前のドンキホーテの快活な印象が強い人でした。
前半の花占いのシーンあたりは特に、病弱な女性という設定を忘れそうなほど、時に快活さが垣間見えます。
狂乱のシーンでも、感情の発露ではなく、静かに美しく壊れていく感があり、周囲の人も痛みをもってそれを見守っているような感じがします。
心臓が痛み、悪寒が走る前の軽やかなステップは、聖霊となる序章なのでしょうか。
息絶え、聖霊となった二幕では表情も雰囲気も対照的ですが、人間くさいと時折感じるのは、どのあたりから来ているのでしょうか。
ところで、詩人でもあったゴーティエは、未婚のまま亡くなった乙女が墓の中から出てきて踊るウィリー伝説にこの物語を着想したと言われます。
無念さを抱えたウィリーたちの群舞の、超常的でちょっと冷気が来るような感じが夏向きだと、私はどこかで思っているのかもしれません。