「若者と死」は決して面白い作品ではないと思うのは、私だけでしょうか。
派手な衣装も華やかなシーンもなく、作品全体を静寂が包む。
登場人物は男の若者と実は死に神である美女の二人。前衛的、というとちょっと違うかもしれないのですが、そんな香りすらする作品です。
初演ダンサーではないものの、この作品はやはり若者役のニコラ・ル=リッシュの圧倒的な存在感が成り立たせると思えてなりません。
「イワン雷帝」の狂気は、その迫力に身震いするほどでしたが、こちらの「若者と死」でも独特の雰囲気が立ち上ります。
洞察力に深い解釈、そして表現力を持ち合わせていると言われるル=リッシュ。
その解釈には、彼の人間観を垣間見る思いがします。