DVDで「ピーターラビットと仲間達・ザバレエ」を見ました。
「不思議の国のアリス」を見ているうちに、思い出しました。
これは1年半ぐらい前に、映画が東京で上映されたと思います。
英国ロイヤル・バレエ団。
かぶりもので動物が演じられるのですが、バレエファンはもちろんのこと、バレエに全く興味がなかったり、あるいは子供でも楽しめる作品ではないかと思います。
演劇性が高く、ちりばめられたユーモアも秀逸。
景色も実に美しく、癒やされます。
おとながつくる、本物の作品という印象です。
英国ロイヤル・バレエ団の「不思議の国のアリス」のDVDを見ました。
アリスはローレン・カスバートソン。
「不思議の国のアリス」の原作は大好きな話のひとつです。
少女アリスがファンタジーの世界に入り込んでしまうストーリー。
バレエでは、恋のお相手ジャックが登場します。
ファンタジーだけあって、映像が実に効果的に使われていました。
DVDの狭い画面で見ているからもあるのかもしれませんが、アリスが小さくなってドアノブに背が届かず、ぴょんぴょんとはねるシーンでは、一緒にやきもき。
反対に大きくなって自分のいる空間が窮屈になるシーンでは、息苦しささえ感じました。
アリスにちりばめられたユーモアが、言葉のないバレエの世界でどう表現されるのだろうと思いましたが、英国の安定感を備えた新しい作品であるように感じます。
先月末にUPされていた新国立劇場の地方公演情報に「ペンギン・カフェ」の文字を見つけました。
静岡の二会場です。
2010年に初演され、反響の大きかった作品です。
絶滅危惧種の動物と人間が、ペンギンの祖先とともにダンスを展開。
「ペンギン・カフェ・オーケストラ」の音楽を使っています。
懐かしさを感じるような音楽に乗って、次々に登場するキャラクターに、子供でなくても思わず笑顔になってしまいますが、地球環境問題に対するメッセージが込められた作品でもあります。
頭でっかちでなく、純粋なエンターテインメントでありながら、重いテーマを含むという手法は、ビントレーの得意な分野ではないのかなと思います。
一緒に上演されるのは、「シンフォニー・イン・C」。
古典的な作品と現代的・大衆的な作品の取り合わせです。
少し前になりますが、フジテレビの「オデッサの階段」という番組でコンテンポラリーダンサーで振り付け家の平山素子さんを扱っていました。
この番組は少し異色な構成で、対象となる人や物の周辺を掘り起こしていくことで、輪郭をくっきり浮き立たせるというもの。視聴者に、主体的にストーリーを頭の中で作っていくよう促していると言えるかもしれません。
平山さんというと、今年は振り付け作品が新国立の「dance to the future」で4月に上演されるなど、今が旬の人。
エキサイティングで、動物的なようで計算し尽くされたー平山作品にはそういうイメージがあります。
この番組では「現象」という言葉がキーワードのひとつでした。
ダンスという肉体の現象を通して、存在の実像に迫っていくーこれは私なりの解釈ですが、そう捉えました。
今朝の新聞に松山バレエ団が被災地への鎮魂の祈りを演出に込めた「くるみ割り人形」を上演する、という記事が載っていました。
記事などによると、クリスマスパーティーの部分で、亡くなった愛する人に似せた人形を持ち寄るよう呼びかけるシーンなどが盛り込まれるということ。
このシーンだけ考えてみても、人形という小物は鎮魂のイメージにふさわしいように思います。
古典作品にあまりに時代を大きく取り入れると、ギャップを感じ、別の作品として見たい気になることもありますが、くるみ割り人形」オリジナルの愛らしさ、明るさを大きく変えることのないアレンジになっているのではないか、という気がします。
被災地から心を離さずにいたいという、演出家のメッセージと感じました。
12月の新国立は15-24日まで「シンデレラ」です。
この欄でも触れたように、少し前からチューリッヒバレエ団のシュペルリ版を何度かDVDで見ていたので、ペローの原作により近いアシュトン版にはちょっとした安心感があります。
シンデレラがみすぼらしい老婆に親切にしたことによって、実は仙女であって老婆がお礼に魔法をかけてくれるーというある種の「必然性」も腑に落ちる要因かもしれません。
ホームページにあるPR用の動画を見ましたが、シンデレラというのは、小柄で清楚な日本人のイメージに合うキャラクターのように思います。
貧しい召使いのような衣服に身を包んでいても、何か輝くものを秘めている様子が、思い描くシンデレラ像に一致します。
ガラスの馬車や舞踏会は、雪と氷のイメージと重なり、クリスマスシーズンにぴったりの作品だというのも頷けます。
ところでアシュトン版は初演から義理の姉を男性ダンサーが演じていたと言います。男性が思いきりコミカルに演じる方が、陰湿になりすぎなくてよいように思います。そういえばビントレー監督も、かつては義姉を演じたのでした。
「ジュエルズ」をDVDで見ました。
バランシンのアブストラクト作品で、しばしば全幕で上演されています。
右脳全開で楽しめる、こうしたストーリーのない作品が好きです。
「ジュエルズ」を見ていると、バランシンの作品は、クラシックを尊重しつつも斬新で、かといって奇をてらわず、実に絶妙なポジションにあるように感じます。
「ジュエルズ」は3部作で、それぞれがフランス、アメリカ、ロシアのバレエへのオマージュ。
ロマンティックチュチュを身につけた女性ダンサーによる優美な「エメラルド」。
斬新でダイナミック、ユーモアに満ちた「ルビー」。衣装はまるでショーガールを思わせます。
そして「ダイヤモンド」。正当ロシア・クラシック・バレエの様式美で終幕です。
陳腐な言い方ですが、「みんな違ってみんないい」という言葉を思わず思い浮かべてしまう3部作。まさに宝石のようなバレリーナの輝きを感じます。
今さら感のある話題ですが、今年は6月にシュツットガルトバレエ団が4年ぶりに来日し、「じゃじゃ馬ならし」の公演が行われました。
クランコの最高傑作。
乱暴者のカタリーナと、彼女を従順な妻にならしていく貧しい紳士ペトルーキオ。
眠らせなかったり、食べさせなかったり・・。
彼女が反抗するのをやめたとき、夫は機知に富んだ存在だと気づくーー。
・・と、活字にしてみると、ミもフタもない感じがします。
シェークスピアの巧みなセリフがあったからこそ、成り立つ物語ではないかと思いきや、多彩なアクションで最後まで飽きさせません。
ペトルーキオとカタリーナのぶつかり合うようなパドドゥもダイナミックです。
とにかく楽しい舞台といえば、これではないかと思いました。
オーストラリアバレエ団の「コッペリア」のDVDを見ました。
90年、シドニーオペラハウスでの収録です。
スワニルダはけがで引退したリサ・パヴァーン。
ミステリアスな窓辺の少女コッペリアに夢中な若者たちが面白くないスワニルダは、演じる人によって、女性にうとまれるキャラになりかねないと思うのですが、リサ・パヴァーンはぎりぎり快活で、女性の目から見てもかわいげのある少女になっているように思えます。
コッペリアに投げキスを送るフランツを見て花を投げつけるシーンも、怒りのしぐさの反面、少しだけやるせない表情を見せるところが可愛い。
オーストラリアバレエ団のコッペリアは、とりわけ衣裳に刺繍やレースをふんだんに使っていて美しいそうで、デザインもかわいらしく、髪飾りも精巧で、こちらも楽しめました。
この欄で以前にも、話がややこしいという印象ーと書いた「シルヴィア」。
27日に開幕する新国立劇場の「シルヴィア」のキャストが先日、発表されました。
ビントレー版は、現代を舞台にしたプロローグを付け加えたり、キャラクターを補完したりして、もともとは無理のあるストーリー展開に説得力をもたせています。
ビントレー版の初演は1993年。
英国バーミンガム・ロイヤルバレエで当時プリンシパルの吉田都がタイトルロールを踊りました。
今回、3日目と5日目のシルヴィアは佐久間奈緒。
英国バーミンガムロイヤルバレエ団のプリンシパルで、新国立は初登場です。
ビントレーのスパイスの効いた新しいシルヴィアに注目しています。