デビット・ビントレーが去り、大原永子が芸術監督に就任した新国立劇場。
8日から新制作版「眠れる森の美女」が始まりました。
ビントレーはオリジナルが目立ちましたが、大原はどちらかというと古典なのでしょうか。
従来の作品で、演出を刷新する、という方向性が窺えるようです。
「眠れる森の美女」のコピーには「・・・呪いは愛を待つ幸せな眠りに変わった」。
これはちょっと新鮮な感じがします。
なるほど、確かにオーロラ姫の長い眠りは、他人が評価すればかわいそうなことになるかもしれませんが、
本人にとってはどうなのでしょう。そんなことを考えます。
橘秋子のもとに、幼くして養女に出され、バレエ教育を受けてきた大原。
その来歴につい注目してしまいますが、新国立の今後四年間を楽しみにしたいと思います。
ベリーダンスの本場がエジプトなのだと最近、知りました。
アラブ文化圏のものとは漠然と思っていましたが、「東方の踊り」を意味する「ラクス・シャルキー」の言葉の起源は、エジプトと言います。
そのエジプト政府の公式ライセンスを持っている唯一のアジア人が木村カスミさん。
千葉県出身で、モデルを経てベリーダンサーに行き着いたそうです。
海外を拠点に活動されているようですが、今年は埼玉県で「アラブの春」をテーマにしたオリジナル作品が上演されました。
ベリーダンスにテーマ性がもたらされること自体が新鮮に感じられましたが、むしろラクス・シャルキーは、内面感情の表現として見られているようです。
一時期、日本でも美容を意識したブームとなりましたが、インナーマッスルを使い、かなりの筋肉運動。
見た目の妖艶さと激しい運動量と。
その両方の要素があるからこそ、現代女性を惹きつけたのかもしれません。
今秋の楽しみは、舞台芸術の祭典「フェスティバル/トーキョー14」。
国際的に注目を集めているアルカサバ・シアターと日本の若手演出家、坂田ゆかりの作品です。
アルカサバ・シアターはイスラエル占領下にあり、紛争の現実をユーモアとアイロニーで表現する団体。
今回は、芥川作品「羅生門」「藪の中」それに、黒澤映画をもとにした「Rashomon」を題材にした新作と言います。
出演はパレスチナの俳優。
パレスチナ、黒澤映画、芥川。
この取り合わせですでにワクワクします。
「フェスティバル/トーキョー14」では、「アジアシリーズ」がスタートし、アジアの舞台芸術に焦点を当てることに。
イスラム神秘主義がモチーフにちりばめられたピーター・ブルック等の作・演出「驚愕の谷」にも注目しています。
少し前の新聞記事に、ニルス・タヴェルニエのことが載っていて、目に留めました。
フランスの俳優でドキュメンタリー映画の監督。
あの「エトワール」の監督でもあります。
「エトワール」は2001年、フランス。
パリのオペラ座に初めてムービーカメラが入った作品と言われます。
バレエという完全な階級社会の内幕やダンサーのさまざまな苦悩を描き出しました。
マニュエル・ルグリやモーリス・ベジャールなどキャストが垂涎の顔ぶれだったこともあるのでしょうが、日本で大ヒットしたのは、「華やかな世界の内幕」が日本人の好む範疇だったからのようにも思います。
で、その監督ニルス・タヴェルニエ。
次の作品「オーロラ」とともに、何となくバレエを撮る監督のように勝手に誤解していましたが、最新作は「グレートデイズ!夢に挑んだ父と子」。
失職した父親と車いすの息子がトライアスロンに挑戦する物語です。
タヴェルニエの関心はかねてより子供だったそう。
この人のドキュメンタリーなら見たい、と思わせるニルス・タヴェルニエです。
今朝のネットニュースを開いて、シルヴィギエムの引退を知りました。
来年いっぱいで引退する旨、東京バレエ団50周年の公演を前に、日本舞台芸術振興会を通じて発表したということです。
さよなら公演は来年12月に日本でということ。
NAVERにシルヴィ・ギエムまとめをどなたかが作っていたのを見てみると、あらためて強い美しさのあるバレリーナ・・・というよりダンサー、という気がします。
100年に一人、というキャッチコピーがネットの記事にはついていましたが、その100年という単位ですら陳腐に思えるほど、と思うと称賛しすぎでしょうか。
プライベートのことをあまり語らず、昔は写真嫌いだったという逸話も、”職人”のようで私には好ましく思えます。
引退年齢とては高い方なのかもしれませんが、どこか超人的なシルヴィ・ギエムなら、まだまだ踊り続けていてもおかしくないような、そんな感じがしていました。
やはりちょっと寂しく思える朝です。
ダンスマガジン9月号の巻頭はボリショイ・バレエの特集。
力のこもった現地取材を感じさせるきらびやかな見開きで始まる記事です。
昨年冬に顔に流線を浴びせられたセルゲイ・フィーリンが芸術監督に就任していますが、その事件の話題にも記事は触れています。
ボリショイは、米国人として初めてホールバーグを迎えました。
フィーリンとホールバーグの接点は、ホールバーグがゲストで出演した「ジゼル」だと、以前読んだことがあります。
精力的にさまざまな人材を招き活動するフィーリンを象徴するのが、米国人ホールバーグのようにも映ります。
伝統、という言葉でしばしば語られてきたボリショイにも、新しい時代が訪れている、のかもしれません。
大人になって、まとまった夏休みとは無縁になりましたが、やはり心が浮き立つ季節になりました。
そして夏の恒例といえば、清里フィールドバレエ。
国内で唯一連続上演されている野外バレエです。
今年は白鳥の湖。
実際に清里近くを通りかかってポスターを見かけ、テンションが上がりました。
八ヶ岳周辺の夜は、本当に静かで闇に包まれていて、悪魔ロットバルトにも、可憐な白鳥にも、いずれも似つかわしく思えます。
今年は「第三回バレエコンクールin八王子」の上位入賞者によるバレエコンサートが、前座的に行われます。
初日の28日が迫ってきました。
新潟のnoismが誕生してから、10年となりました。
日本で最初の、また唯一の公共劇場のレジデンシャルカンパニーということになります。
ダンスマガジン6月号で芸術監督の金森穣と副芸術監督でダンサーの井関佐和子が対談していました。
コンテンポラリーダンスの領域の話題は、抽象画のように、私にはとても難解なものが多いのですが、この記事は大変わかりやすかったです。
直近の舞台は6月、新潟、兵庫などでの「カルメン」でした。
カルメンのようなロングセラーの作品が、コンテンポラリーで踊られることも、注目に値した出来事だったように思います。
自治体によってまかなわれるカンパニーが存続していくのか、ちょっと危ぶむ気持ちも抱いていましたが、もう10年。
次の10年はどう進化していくのでしょうか。