5月2日から新国立劇場で、D.ビントレー芸術監督の「アラジン」が上演されます。
願いを叶えてくれるランプの精、人を乗せて空を飛べるじゅうたん。
千夜一夜物語を元にしたビントレーの夢の世界が、3年ぶりに帰ってきます。
主役のアラジンとプリンセスには、初演に続くベテランの山本隆之・本島美和、
八幡顕光・小野絢子。それに福岡雄大・さいとう美帆ペアが新しく加わりました。
小野絢子は3月に芸術選奨文部科学大臣新人賞を、今月に入って第42回舞踊批評家協会新人賞を相次いで受賞し、今もっとも旬。清楚で芯の強さを感じさせる雰囲気は、純粋なプリンセス役にぴったりという感じがします。
前回からさらに磨きのかかった細やかな表現力に期待したいです。
この作品のテーマは夢と冒険。
カールディヴィスの音楽もファンタジックな世界へ胸を膨らませてくれます。
今だからこそ、一夜の夢に浸りたいと思います。
「くるみ割り人形」は世界で最も有名なバレエ作品です。
クリスマスイブのファンタジー。
「第九」と同じ年の瀬の風物詩であり、慌ただしい12月だからこそ浸りたい夢の物語です。
またさまざまな形でアレンジされている作品でもあります。
自伝的な要素を付け加え、少年時代の思い出を投影したベジャール版、巨大な円筒を用いて斬新に演出した札幌舞踏会の坂本登喜彦版、主人公のクララが意思を持って旅に出る設定となっているKバレエカンパニーの熊川哲也版。
筋立ての変化や演出に異論もさまざまですが、なんやかやと議論が交わされるその盛り上がりこそ、名作たるゆえんだと言うと安易でしょうか。
クリスマスの夜、無骨で不思議な人形は実は王子様、夢のお菓子の国。
この物語の原型には子供の心を引き付ける材料がそろっています。遊び心の似合う作品でもあります。
大人は夢だと片付けるけれども、どこかに別の世界があるのかもしれないー本当は大人も信じたい物語だからこそ、時を経て愛され続けるのかもしれません。
震災支援のチャリティー関連の記事の中に、吉田都のオーガナイズしたロンドン緊急公演の話題を見つけました。
世界最高峰である英国ロイヤル・バレエ団の日本人初プリンシパル。
昨年、突然の引退の報には驚きましたが、絶頂期の幕引きに彼女なりの美学を感じました。
今後は「ただ楽しみたい」と報道で聞きましたが、ロイヤル・バレエ団を退団後、フリーランスとなってからも公演は目白押しです。
世界最高峰のバレリーナたるゆえんは、技術力に加えてたぐいまれな表現力、ことに音楽との一体性と言われます。観客を一種独特の感覚に引き込む音楽と少しのずれもないパフォーマンスには、「神に愛された舞姫」という言葉が浮かび、天賦の才能を感じさせます。
5月下旬には英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団の来日公演にタイターニア役で客演予定。まさに妖精のように、観客を魅了してくれることと思います。