「くるみ割り人形」は世界で最も有名なバレエ作品です。
クリスマスイブのファンタジー。
「第九」と同じ年の瀬の風物詩であり、慌ただしい12月だからこそ浸りたい夢の物語です。
またさまざまな形でアレンジされている作品でもあります。
自伝的な要素を付け加え、少年時代の思い出を投影したベジャール版、巨大な円筒を用いて斬新に演出した札幌舞踏会の坂本登喜彦版、主人公のクララが意思を持って旅に出る設定となっているKバレエカンパニーの熊川哲也版。
筋立ての変化や演出に異論もさまざまですが、なんやかやと議論が交わされるその盛り上がりこそ、名作たるゆえんだと言うと安易でしょうか。
クリスマスの夜、無骨で不思議な人形は実は王子様、夢のお菓子の国。
この物語の原型には子供の心を引き付ける材料がそろっています。遊び心の似合う作品でもあります。
大人は夢だと片付けるけれども、どこかに別の世界があるのかもしれないー本当は大人も信じたい物語だからこそ、時を経て愛され続けるのかもしれません。