いろいろな改訂が図られ、その違いが楽しめる作品といって、私がすぐ思いつくのは「くるみ割り人形」でしょうか。
「くるみ割り人形とねずみの王様」(E.T.Aホフマン)をもとにした初演は、もともとプティパの振付け予定だったそうですが、高齢でイワーノフが務めることに、
その時カットされたくるみ割り人形の過去に関するエピソードが盛り込まれたのが、ピーターライト版。孤児院を舞台にしたマシューボーン版。幼年期の思い出がモチーフとなるベジャール版。
先日DVDで見たのはヘルギ・トマソン版でした。
サンフランシスコ・バレエの上演で、サンフランシスコという街も、モチーフとしてさまざまに折り込まれています。
こう考えてみると、社会的なメッセージが込められているようにも見える版がいくつもあり、そこはきっと演出家自身の来歴とも結びついているのだと思います。そういう鑑賞の仕方もしたいと思います。