明るくコミカルな味わいの「コッペリア」が大好きです。
主人公のスワニルダはもちろん、好青年といった風体のフランツ、人形師のコッペリウス、村の若者たちに至るまで、危なげない人ばかりの登場人物。
ストーリーのもととなっているホフマンの「砂男」は、人形を愛する男の狂気を描いていますが、こちらは安心して見ていられます。
何と言っても太陽のように全編を照らしているのは、スワニルダのキャラクター。ほかの女性が気になるフランツにやきもちを焼いたり、コッペリウスの家に こっそり忍び込んだり。明るく冒険が好きで、はつらつとしたスワニルダの人物像が、キャラクターダンスをはじめ、細部からも伝わってきます。
「演技」の面白さもこの作品の魅力です。動かぬ視線や機械的な関節の動きで表現される「人形の表情」に、思わず感嘆します。
ところで、以前新国立でも上演されたローランプティ版は、スワニルダにひそかに恋焦がれるコッペリウスが彼女に似た人形をつくるーという筋立て。天才プティの画期的な演出ですが、コッペリウスの哀愁がちょっと切なく映ります。