「イヴァン雷帝」はもともとボリショイバレエの作品ですが、私が見た「イヴァン雷帝」は2004年パリ・オペラ座。
そのせいなのかどうか、あまりロシア臭がしないように感じるのは私だけでしょうか。
スラブの香りがしないのです。
雷帝のニコラ・ル・リッシュの異様な迫力もアナスタシアのエレオノーラ・アバニャートの美しさも素晴らしいことはもちろんなのですが、
ロシア的な感じがしないな、というのが最初の印象でした。
演出とか衣装とかそういったものに何か問題があるというわけではたぶんないと思うし、作品全体の価値が変わるわけでももちろんなく、私の中の
イメージと一致しないというだけのことだとは思うのですが。
そんな中で、私が「ロシアっぽい」と勝手に感じたのは、ラストシーンの鍵ともなっている道化者です。
イヴァンと親衛隊が鞭を振るって粛清をしていく中で、一人の道化が踊る。
その道化の中にいるのは実はイヴァン。その道化に首に縄をかけられてつり上げられて終幕。
ロシアという国、あるいは狂気に踊らされ、捕らえられて一生を終えたイヴァンを象徴しているのでしょうか。