ピーターと狼
昔々のロシア。ピーターという少年が、森の牧場でおじいさんと一緒に暮らしていました。
ある朝、散歩をしていたピーターが友達の小鳥とおしゃべりしていると、ピーターの飼っているアヒルがやってきました。普段は囲いの中にいるのですが、ピーターが庭の戸を閉め忘れ、外に出てしまったのです。
地面をよたよたと歩くアヒルを、小鳥は「ぼくみたいに飛んだら早いのに」とからかいます。
一方、池に着き水浴びを始めたアヒルは「飛ばなくても平気よ。わたしは泳げるの」と答え、「あなたは泳げないのね」と笑いました。それからケンカをはじめてしまった小鳥とアヒルに、大きな猫が忍び寄っていきます。「危ない!」気が付いたピーターの呼びかけで、小鳥は空へ、アヒルは池の中央へと逃げて事なきを得ました。
ちょうどその時、おじいさんがやってきて「ここは狼が出るんだぞ、食べられたらどうするんだ!」とピーターを叱り、家へと連れ戻しました。
おじいさんの心配した通り、ピーターがいなくなるとすぐに森から狼が現れます。
猫は素早く木の上に逃れますが、追いつかれたアヒルは捕まって丸のみにされてしまいました。
まだまだお腹が空いている狼は、小鳥と猫を狙って木の下をうろうろと歩き回っています。
それを見ていたピーターは2匹を助けるある「作戦」を思いつき、長いロープを用意すると、塀によじ登りました。
小鳥に「狼の頭の周りをグルグル飛び回って」と呼びかけます。小鳥に食らいつこうと夢中になっている狼のしっぽをロープの輪で引っ掛けると、力いっぱい引っ張りました。狼はびっくりして逃げようとしますが、ピーターはあらかじめロープの端を木に結んでいたため、狼が遠くへ逃げようとすればするほど結び目はきつく締まっていきました。
そこへ、狼を追って森から狩人たちがやってきました。ピーターは狩人たちに事情を話すと、狼を動物園に引き渡すため、彼らに狼を捕らえてもらいました。そして小鳥を先頭に、ピーター、狼を連れた狩人たち、おじいさんと猫、という行列で、動物園に向けて出発します。アヒルは狼のお腹の中で、クワックワッと鳴いていました。
「動物園に着いたら、きっと出してもらえるからね」ピーターはアヒルにそう話しかけるのでした。
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